作業BGMと、「ジャーロ」No.76に掲載された記事について

作業BGMと、「ジャーロ」No.76に掲載された記事について

いろんなクリエイターに話を聞く機会が多くあるのだが、個人的に楽しみにしているのが、「仕事中/作業中にどんな音楽を聴いているか」という話。
「集中したいから音楽は聴かない」と断言する方もいるが、なにかしら聴きながら作業しているという方は少なくはない。
特に多いのが、外部の雑音を遮断するために聴いているというパターンだ。
オフィス勤務しているデザイナーやライター、プログラマー、コーダーの方ならわかるとは思うが、オフィスというのは基本的に雑音が多い。電話の話し声が気になって作業に集中できないということはよくある。そういった物音を遮断するため、ヘッドフォンやイヤフォンで音楽を聴くのだ。ただ、これにはもう1つ裏の目的がある。オフィスにはたまに、こちらが何をしていようがお構いなしに話しかけてくる奴がいる。作業中にいきなりモニターを手でバンバン叩きながら話しかけてくる馬鹿もいる。ゴールに向かって必死に泳いでいるときに、急に後ろから頭を掴まれて、水上に引きずり出されるような――といえばわかってもらえるだろうか。急に話しかけられることで、集中力が途切れてしまうのだ。それだけなら、まだいい。最悪の場合、さっきまでのテンションに戻れなくなってしまうのだ。つまり、そういう無頓着な輩というのは、作業を進める上での障害でしかない。彼らへの対策として、「話しかけてこないでね」オーラを醸し出すことを目的として、音楽を聴くのだ。

今、手がけているものにより集中したい、同調したいから音楽を聴くというパターンももちろんある。作業のテーマソングとして音楽を聴いているわけだ。

「このキャラクターのテーマソングはビートルズの『ヘルター・スケルター』と決めているので、同曲を聴きながら書いている」

「私の中では、あるシーンのBGMがスティングの『Shape Of My Heart』だったので、その小説を書くときは、気分を盛り上げるために聴いていた」

「名探偵が一同を集めて推理を披露する解決シーンは、名探偵がドライヴしなければならない。だから、ベートーヴェンの第七を聴くようにしている。トスカニーニとNYPのね」

そういう話が音楽好きとしては、非常に面白い。

なお、私自身は、ゲラをチェックするときは特にジャンルにこだわらないが、企画書を作成しているときは企画の内容に合った音楽を聴くようにしているし、原稿を書くときはひたすら自分を駆動させるため、ミニマルなデトロイト・テクノを聴くようにしている。

作業時に何を聴いているか。どういう基準で音楽を選んでいるか。
実は、そういった各人のこだわりについては、「バスルームで小説を書く100の方法」でも訊くようにしている。
音楽に気を取られるので音楽は流さない、流しても環境音楽のようなものしか流さないという方が多い。
そんな中、「常に(音楽)を聴きながら執筆している」と言い切ったのが森晶麿さんだ。
どういった音楽が自身の作業に合うのか/合わないのかを、森さんは明確に語ってくれた。挙げ句、森さんは原稿執筆時に、タイプ音がカチャカチャ鳴っているのが楽しいらしく、BGMとして聴いている坂本龍一の音楽に合わせて、リズミカルにタイピングしていることも打ち明けてくれた。ここまで来ると、ほぼセッション。ぶっ飛んでいる。

森さんの執筆作業に合う音楽とはなにか。どういう基準で音楽を選んでいるのか。その答えはもちろん――発売中の電子雑誌「ジャーロ」2021.MAY(No.76)に掲載されているので、そちらをお買い求めいただければと思っている。

というわけで、ミステリ文芸誌「ジャーロ」No.76に、遊井が企画・編集を担当する連載「バスルームで小説を書く100の方法」の最新エピソードが掲載されます。

ミステリ作家がどんな環境で小説を書いているのか。どんな道具を使って物語を作っているのか。――「バスルームで小説を書く100の方法」は、一人の作家を文化的な背景からではなく、使ってきた機材から捉えるドキュメンタリー企画である。インタビューを通じて、作家が使った機材を明らかにするとともに、小説の書き方を探っていく。

第14回目となる今回のゲストは、前述したように森晶麿さん。作家デビューにあたり、首都圏から地方に移住した森さんの仕事術は、リモートワークの時代となった現代では参考となる点は多いだろう。また、育児から創作にフィードバックされたことについても伺ったみたので、子育てと作家業の両立といったテーマにもご興味のある方はぜひぜひ。