2018年度のアルバム私的Best10

2018年度のアルバム私的Best10

はじめに

年末恒例、ということで。

とりあえず2017年12月~2018年11月の間にリリースされたアルバムから、独断と偏見で2018年度のベスト10を挙げておきます。

なお、私の〈Best10選出〉は、1996年に地元のレコード屋さんからの依頼で、同店舗が発行していたフリーペーパーに寄稿したものから始まっておりまして、一昨年に1度中断しましたが、20年以上もBest10を選び続けてきたということになります。いやはや恐ろしい。

最後に。コメントは覚え書き程度のものなので、お手柔らかにお願いします。

なお、2017年度のものはこちら。

洋楽新譜部門

1位 ライ・クーダー『Prodigal Son』
2市 トニー・ベネット&ダイアナ・クラール『Love Is Here To Stay』
3位 ドニー・フリッツ『June (A Tribute to Arthur Alexander)』
4位 ポール・キャラック『These Days』
5位 パンチ・ブラザーズ『All Shore』
6位 ポール・サイモン『In the Blue Light』
7位 ポール・マッカートニー『Egypt Station』
8位 アンプ・フィドラー『amp dog nights』
9位 ジョン・オーツ『Arkansas』
10位 トニー・アレン&ジェフ・ミルズ『Tomorrow Comes The Harvest』
次点 ウォルター“ウルフマン”ワシントン『My Future Is My Past』
次点 バーズ・オブ・シカゴ『Love in Wartime』

コメント

1位は以前も書いたが、要は音楽好きが頭に思い浮かべるであろう「ライ・クーダー的なもの」「ライ・クーダー的なフレーズ」「ライ・クーダー的なスライド・ギター」に満ちあふれている1枚。ブラインド・ウィリー・ジョンソン曲がとにかく凄い。ゴスペル感覚をより高みで掴んでると思う。

2位のトニー・ベネットのデュエット・アルバムはそりゃ素晴らしいに決まっているのだが、この2人でガーシュウィンの楽曲を歌っていくという企画が素晴らしい。アメリカのポピュラー音楽史の縦糸がすっと繋がったような。

3位はゆったりとゆらめくグルーヴと、ドニーのあの歌声がとにかく最高。

4位、6位、7位の3人のポールはほぼ同タイミングで出たけど、一番好きだったのは、ポール・キャラックの1枚。サー・ポールのアルバムは近年のポール卿のアルバムではダントツに良かった。
10位のトニー・アレンとジェフ・ミルズのアルバムは 宇宙を見せられた。そして、デトロイト・テクノがソウル、ファンク、ジャズと地続きであることを思い出させてくれた。

アンプ・フィドラーのどす黒さと、トニー・アレン&ジェフ・ミルズの宇宙的などす黒さに痺れた1年でした。

洋楽再発・発掘部門

1位 トム・ペティ『An American Treasure』
2位 ボブ・ディラン
   『More Blood, More Tracks: The Bootleg Series Vol. 14』
3位 プライマル・スクリーム
   『Give Out But Don’t Give Up: The Original Memphis Recordings』
4位 エルヴィス・プレスリー
   『Elvis: ’68 Comeback Special: 50Th Anniversary Edition』
5位 ビートルズ『White Album(Delux Edition)』
6位 ローリング・ストーンズ『On Air』
7位 ジ・アクション
   『Shadows And Reflections – The Complete Recordings 1964-1968』
8位 VA『Doo-Wop Nuggets Vol.1 desire』
9位 キンクス
   『The Kinks Are The Village Green Preservation Society(Delux Edition)』
10位 キャンディ・オペラ『45 Revolutions Per Minute』
次点 VA『Planet Mod : Brit Soul, R&B And Freakbeat From The Shel Talmy Vaults』
次点 ジャッキー・デシャノン
   『Stone Cold Soul~The Complete Capitol Recordings』

コメント

1位はディランと悩んだのだが、出てくれたのが嬉しかったし、何より「トム・ペティ」という素晴らしい才能がちゃんと俯瞰で確認できる内容になっていたのもよかったので、トム・ペティを。
トム・ペティというとすぐに「ああ、ディランに尻尾を振ってる奴な」「バーズのコピーな」的なことを言いたがる自称ロック好きがいるけども、そういうアホどもに「トム・ペティはトム・ペティである」ときちんとわからすことができるボックスだと思う。こういうクロニクルはマジで大事。

ただ、実質的な1位はこっちかな。歴史的な価値では、こっちに軍配が上がる。

で、内容に衝撃を受けたのが3位と5位。
常々、プライマル・スクリームの最高傑作は「ディキシー・ナーコep」だと言ってきたが、それをあっさり更新しちゃった。アメリカ音楽にどっぷり浸かったこの盤は、「ディキシー・ナーコ」のNEXTとしても妥当だし、こうして出てくれて安心しました。発掘されてよかった。20年後は『スクリーマデリカ』より、こっちが名盤として残るでしょうね。

5位。CDの『ホワイト・アルバム』については、今までドクター・エベットが手がけたMONOのブートが決定盤だと思っていたが、今後はこれが決定盤。今からはこのリマスター版だけ聴いていればよい。
ひとつひとつの音がくっきりしているし、何より低音部がしっかり聴こえる。ここまで見事に生まれ変わるとは思いませんでした。とりあえず、「グラス・オニオン」の冒頭を聴けば、言ってることはわかると思う。

個人的には、山下達郎さんの労作が世に出たこと、エルヴィスの『カムバック・スペシャル』がBlue-rayで出たこと、キャンディ・オペラの盤が出たことに感動した1年でした。

邦楽部門

1位 コーネリアス『デザインあ2』『あ3』
2位 chiquewa『Sentimentalizer』
3位 ぱんだっち『Pandaful World』
4位 民謡クルセイダーズ『エコーズ・オブ・ジャパン』
5位 YMO『NEUE TANZ』
6位 VA『素晴らしいアイデア 小西康陽の仕事1986-2018』
7位 コーネリアス『Ripple Waves』
8位 ゴンノ&マスムラ 『In Circles』
9位 松田聖子『Sweet Days』
10位 シリア・ポール『夢で逢えたら』
次点 小沢健二「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」
次点 CERO『POLY LIFE MULTI SOUL』

コメント

コーネリアスは音と言葉の組み合わせが面白かった『あ』の2作を上に推します。

2位、3位は個人的に一番愛おしい盤。90年代の金がかかっていたブラック・ミュージックの音していたし、ギターはエロいし、ボカロに歌心はあるし、最高。これは洋楽リスナーにこそ聴いてもらいたいなあ。

民謡クルセイダーズは2018年度のトレンド。

YMOのコンピは選曲の妙にも唸らされたが、何より砂原さんのリマスターに痺れた。YMOが1978年から1983年に出した音楽というのは今でも十分通じるものだが、今回の『NEUE TANZ』は1978年から1983年の音を“今の音”にしたもの。
「今でも通じる」ではなく「今の音で通じる」。これはもう新譜みたいなものです。

小西さんの仕事集はオマケも充実していて、BOX好きとしても楽しめました。今年一番のBOXだと思います。

あと、今年出た日本ものでは、これが最高でした。

80年代の松田聖子の全シングル盤のAB面をぶちこんだブツ。今は亡きHip-Oが出しそうなブツ(出さないよ)。80年代の松田聖子の歌唱がいかに変わっていったのかを端的に理解できるもので、資料性もすごく高いっす。