平成31年4月25日に南雲堂さんからリリースされた『平成ストライク』が、この度、文庫化されることになりました。レーベルは角川文庫さんです。
『平成ストライク』とは?
『平成ストライク』は平成の時代に実際に起こった事件や流行った事柄をテーマにした小説アンソロジーです。
福知山線脱線事故、炎上、二分の一成人式、渋谷系、差別問題、新宗教、消費税、ネット冤罪、東日本大震災――〈平成〉という時代を九人の作家が書き起こします。
収録作はすべて書き下ろし。収録作品のジャンルは本格ミステリ、社会派ミステリ、ハードボイルド、ファンタジーとわりとなんでもありです。
ご寄稿してくださった作家は次の9人。青崎有吾さん、天祢涼さん、乾くるみさん、井上夢人さん、小森健太朗さん、白井智之さん、千澤のり子さん、貫井徳郎さん、遊井かなめです。
各作家が寄稿した短編のタイトルと、テーマは以下のとおり。
- 「加速してゆく」青崎有吾 福知山脱線事故
- 「炎上屋尊徳」井上夢人 炎上
- 「半分オトナ」千澤のり子 二分の一成人式
- 「bye bye blackbird」遊井かなめ 渋谷系
- 「白黒館の殺人」小森健太朗 差別問題
- 「ラビットボールの切断 こども版」白井智之 新宗教
- 「消費税狂騒曲」乾くるみ 消費税
- 「他人の不幸は蜜の味」貫井徳郎 ネット冤罪
- 「From The New World」天祢涼 東日本大震災
おまけとして、平成の年表「平成30年史~あるいは、戦場のボーイズライフ30年分」を付けています。作成者は私です。
なお、各話のあらすじについては、こちらをご参照ください。
また、南雲堂版に関しては、こちらをご参照ください。
文庫化にあたっての変更点
今回、文庫化にあたって、皆さん各作品に細かく手を入れてくださったようですが、大きく変わったのは、白井さんの「ラビットボールの切断 こども版」と私の「bye bye blackbird…」の2作。
白井さんの作品は「こども版」とあるように、南雲堂版よりも表現がややマイルドになっております。遊井の「bye bye blackbird…」はローリング・ストーンズに関する描写が増えています(なんのこっちゃ)。
また、解説に関しても、角川文庫編集部から「『令和に入ってから』の記述を少し足していただけたら」というオファーがあったため、大幅に加筆しております。ウィズ・コロナの令和2年から平成を振り返るという内容になったものもあります。また、乾さんの「消費税狂騒曲」は南雲堂版の時点で、本文内に「令和」という言葉がすでに登場していたわけですが、〈4月25日発売の本にどうやって「令和」を間に合わせたのか〉に関しても種明かしをしております。
表紙について
今回、表紙は廣野小生さんに描いていただきました。
渋谷西口歩道橋のあたりに立っている女子高生ということで、センター街に女子高生が立っていた南雲堂版との繋がりもある素晴らしい表紙です。儚さと力強さが絶妙なバランスで同居していて、今風に言えば、非常に「エモい」表紙イラストだと思います。
さいごに
ミステリマニアだけでなく、ミステリをなんとなく好きだという方、今となっては平成を愛おしく思えてしまった方向けの本だと思います。「平成」という言葉を聞いて感傷的になっちゃってる自分を照れくさく感じるような人たちに、お手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。