『平成ストライク』の装幀について

『平成ストライク』の装幀について

はじめに

以前、ここでも書いたことだが、元々『平成ストライク』は『奇想天外2018』の企画として思いついたものだった。ただ、ここでも書いたように、『奇想天外』が志向するものや感覚に根付いているものは昭和のサブカルなので、〈平成〉というコンセプトとは食い合わせが悪いだろうと思い、平成のサブカル者である私が引き取ったといういきさつがある。
この〈昭和〉と〈平成〉について、もう少しわかりやすく説明してみる。

『奇想天外』はとにかくカオスである。カオスであればあるほど輝く本だ。収拾がつかないことこそが美学、といっても過言ではないだろう。――これが、〈昭和〉のサブカルだ。
対して、私が志向するものは非常にDJ的なもの。筋が一本通っているというか、いろんな曲が流れるけど、終わってみれば「ああ、あれはあんたっぽい選曲だね」と言われるようなものである。自分の曲でないものを次々かけていっても、ちゃんと自分の色が出ているというか。カオスのまま放置するのではなく、きちんと自分なりに編集してひとつの意味を付与する――これが〈平成〉のサブカルだ。というより、渋谷系のアティテュードである。ここでも書いたように、コンセプトも一貫していて、隅々まで全方位でキッチュでスタイリッシュでポップなものに仕立て上げる――それが、私の志向するものなのだ。すなわち、『女王陛下のピチカート・ファイヴ』である。

ゆえに、表紙ももちろんそういった方向性を目指すことになった。特に今回は、渋谷系直撃世代としての矜持をこの1冊で見せようと意気込んでいたので、表紙周りにはかなりこだわった。
様々な軌道修正こそあったものの、カバーはストリートに立ったギャルでいくというのは当初から決まっていた。そして、「egg」さんとのコラボが決まり、写真を山崎達郎くんにお願いすると決まった段階で、コンセプトは確固たるものになった。――すなわち、ストリート感覚が求められることになった。
編集するのは渋谷系直撃世代として、90年代に渋谷で遊び呆けていた私。モデルは、「egg」の現役モデル。つまり、90年代末から00年代頭にかけて渋谷でもっとも輝いていたギャルたちの系譜にある女の子。撮影場所は、現在の渋谷センター街。平成初期、中期、後期が見事につながるわけである。

実際に表紙周りを見てみよう

能書きはここまでにして、実際に本を見ていこう。

帯にある「さよなら平成、さよならニッポン」には特に意味はない。「さよなら平成」と来たら、下の句は「さよならニッポン」になることは決まっている。渋谷系直撃世代だと、もう1つ、ある大ネタに気づくかもしれない。

帯を外した状態。帯を外すと、ルーズソックスが見えるという趣向が素晴らしい。なお、このルーズソックスは90年代当時のスタイルではない。きぃぃりぷさん流、つまり今のスタイルということになる。

撮影直前までは、カバー表4側もきぃぃりぷさんには物憂げな表情をしてもらうことになっていたが、なんか物足りなかったので笑顔を抑えた。もっとはっちゃけたヴァージョン、かつての「egg」表紙っぽいのも撮影したが、そっちはお蔵入り。
帯の『「平成』という言葉を~」は、私が書いた「まえがき」からの抜粋。私はこの文章が照れくさいのでここに掲載したくなかったのだが、南雲堂のHさんが推したのと、坂野さんがラフの時点でこの文章をここに置いていたこともあって、そのママ掲載されることに。恥ずかしい。

「HEISEI STRIKE」の文字は当初オレンジ色ではなく赤色だったのだが、私のラッキーカラーがオレンジなので、変えてもらった。

カバーをとってみよう

一度、カバーをとってみてもらいたい。表1にあるのはどこかの街角の写真だ。

こちらは表4側。
そう。表1で使った写真と表4で使った写真は実は1枚の写真で、それを横イチでそのまま使ったのである。
実はこの写真。カメラマンの山崎くんが15年ほど前に撮影したもので、吉祥寺のサンロード前になる。まだ、新アーケードになる前の写真である。

表紙や扉には街の風景を載せ、〈平成〉という時代を本に封じ込めてしまう。ただし、写真はあくまで街が主体で、人物が主体ではない――そういうニュアンスだったと記憶しているが、welle designの坂野公一さんからはそういう提案を受けていた。
表紙は街の写真をパノラマで載せて、風景で本をパックしよう――そういう提案も坂野さんから受けていた。私がなんとなく考えていたストリート感というコンセプトは、そこで形になった。坂野さんには感謝している。

表2側。こちらは15年ほど前の吉祥寺駅南口前。

こちらは表3。15年ほど前の吉祥寺駅北口。大きく映っている目つきの悪い鳥みたいなのは、灰皿だ。奥にはまだユザワヤのビルがある。
つまり、今回の本は表2と表3、吉祥寺駅の北口と南口で1冊を包んだことになる。
お気づきの方もいるだろう。この本は井の頭線の始発と終点で綴じられた本なのだ。

本文パートについて

今回、収録した9本の短編と年表には、扉ページを設けた。扉絵として掲載したのは、山崎達郎くんが今までに撮り貯めてきた写真。すべて、2003年以降に撮影されたものである。昭和な雰囲気もあるけど、あれはすべて、平成15年以降に撮影されたものだ。山崎くんの写真は、以前ここでも書いたように、“今の都会”を撮影しても、時代がどこかおかしく、幻想の都会になってしまう。彼の写真が醸し出す素敵なマジックに私は頼ることにした。〈平成〉という時代のけったいさ、捉えどころのなさを表現しようと思ったのだ。その狙いは当たったと思う。
たとえば、私の「bye bye blackbird…」の扉。

歌舞伎町のセントラルロードである。奥に見えるのはコマ劇場。ゴジラビルはまだない。通りに置いてあるカラオケの看板は、書体も古臭く、80年代っぽさもある――それでも、この写真は2005年ぐらいに撮影されたものなのだ。この時代性のなさ。平成という時代に迷い込んだまま浮遊してしまったような感覚。これが欲しくて、山崎くんの写真を私は必要としたわけである。

さいごに

以上のような本なので、表紙周りや扉なども、じっくりと楽しんでいただけたら幸いだ。よろしくお願いいたします。

追記(4/26)

装幀を担当したwelle designさんがデザインについての紹介記事をアップしています。併せてご覧くださいませ。

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