へいせいな日々以前~『平成ストライク』が始動するまで

へいせいな日々以前~『平成ストライク』が始動するまで

平成をテーマとするアンソロジーを思いつくまで

平成をテーマにした短編を集めて、アンソロジーを編む――『平成ストライク』の構想が生まれたのは、昨年5月のことだった。ただ、当初は単体のアンソロジーとしてではなく、『奇想天外2018』に収録する企画として、私は考えていた。
昨年5月、『奇想天外2018』について企画を練っていたとき、私は次のように提言した。

「ただ雑然と小説を並べるのではなく、ある一つのお題に沿って書いてもらったものを集めた方がよいのではないか」

では、どういうお題がよいかという話になって、私が思いついたのが平成をテーマとする小説であった。

しかし、私はそこでそのフラッシュ・アイデアを口にはしなかった。踏みとどまった。なぜか。〈奇想天外〉の軸となるスピリッツは昭和だからだ。
曽根さんの「奇想天外」も、山口氏の『奇想天外』も、昭和のアングラ感が強く香る冊子である。言葉はやや悪いが、あの雑然とした感じ、いかがわしさは、昭和のサブカルだ。平成のそれではない。平成をテーマとする小説はハマらないだろう。それに、『奇想天外』のコンセプトとしてブレてしまう可能性が極めて高い。

そこで私は、『奇想天外2018』から切り離して、アイデアをひそかにブラッシュアップさせることにした。
それに何より、このとき、私には自覚があった。『奇想天外』ではなく、私の名義でやるべきだろうと。

〈キッド・ピストルズ・リボーンズ〉プロジェクト、〈初期作品集〉1)後に、『ミッドナイツ』と名付けられたようだと同様に、私のフラッシュ・アイデアを起点として生まれた企画ではあったが、私は新たなアイデアを自分の企画として動かすことにした。

平成をテーマとするアンソロジーがスタートするまで

私が当初想定していたのは、雑誌(この場合は『奇想天外』)の1コーナーとしての小説企画であった。しかし、どうせなら小説をじっくり読みたい。最低でも原稿用紙50枚以上ある小説を読み続けたいと考えるようになった。
そこで私が志向したのは、平成をテーマとする小説アンソロジーだった。

次に私が考えたのは、「どうせなら、平成が終わるタイミングで平成をテーマとするアンソロジーを出したい」というものであった。
昭和の終わりと違って、生前退位となる今回は、そういう企画も可能だろう。自粛ムードもなく、お祭り的に平成から次の年号へと移る中で発表したい。そのように考えたのである。
コンセプトと発売(したい)時期が決まったところで、私は企画書を書き始めた。
「テーマはなんでもあり」ということを示すため、「本書は、そんな平成の時代に、日本で実際に起こった事件、日本で実際に流行ったものをテーマに、作家に小説を書いてもらう短編アンソロジーです」という一文を、私はまず書いた。さらにダメ押しで「たとえば、東日本大震災や地下鉄サリン事件、ダイヤルQ2やノーパンしゃぶしゃぶなど」という一文も添えた。艶笑譚もありですよ、というフリをそこで行ったのである。
企画書はすぐに書き上がった。アンソロジー全体に芯となるものを据えるため、平成年表も付けることにした。私が過ごした〈自分の平成〉を年表として記録することにしたのだ。

そこで、私は企画を一晩寝かすことにした。熱に浮かされたような状態で一気に作り上げた企画なので、客観的に見たかったからだ。

『平成ストライク』がスタートするまで

私は最後の仕上げとして、タイトルを考えることにした。
基本線は最初から決まっていた。「平成」+カタカナでいくことで決めていた。
平成10年代だと椎名林檎、平成20年代だとじん。『無罪モラトリアム』『勝訴ストリップ』とか、「群青レイン」「夜咄ディセイブ」とか。私はそういったものに惹かれることはなかったが、平成の時代、はしかのように流行ったサブカルには、漢字2文字+カタカナが目立ったような気がする。そのパロディをやろうと思ったのだ。
AKBも「大声ダイヤモンド」「永遠プレッシャー」「重力シンパシー」といったあたりは名曲率高いし。

その日、いくつか浮かんだアイデアで一番ピタリとハマったのは、「平成ポルノ」だった。しかし、これでは企画が通らないだろうことはわかっていた。私はもう一晩、企画書を寝かせることにした。
翌朝、私は「平成ストライク」というタイトルを思いついていた。平成の時代に10代を過ごした私、つまり平成直撃世代の私が編むのだから、「平成ストライク」だろうというのが、発想のきっかけだ。私は企画書に「題名:平成ストライク(仮)」と書いた。
午後、私は南雲堂に電話する。「こんな企画を思いついたけど、どうですか? ご興味あれば、企画書をお送りしますよ」

3日後、企画にゴーサインが出る。
そして、私はまず天祢涼さんに電話したのだった。

註釈   [ + ]

1. 後に、『ミッドナイツ』と名付けられたようだ

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