- 1. 渋谷系年表への私なりの補足~1997年編
- 2. 1997年の渋谷系
- 2.1. ○市川崑監督、1961年の作品『黒い十人の女』リヴァイバル上映
- 2.2. ●原田知世『I could be free』リリース(2/21)
- 2.3. ○広末涼子主演、映画『20世紀ノスタルジア』(監督/原将人)公開(7/26)
- 2.4. ●小西康陽、レディメイド・レーベルをスタート(6月)
- 2.5. ●『ワンダー植草甚一ランド』の19刷が発売
- 2.6. ●HCFDMムーブメントが起き始める
- 2.7. ●世界同時渋谷化(夏~秋頃)
- 2.8. ●ユカリフレッシュ、『YUKARIS PERFECT』をリリース(9月)
- 2.9. ●『Ro3003』がリリース(11月)
- 2.10. ●マイク・オールウェイの新レーベル〈if〉始動(12月)
- 2.11. ●京都のミニコミ『POPSY ROCK』vol.05で〈el〉特集(12月)
渋谷系年表への私なりの補足~1997年編
5/28にNHKのEテレで放映された『ニッポン戦後サブカルチャー史 III 90’sリミックス』の〈「渋谷系」とDJカルチャー〉が放映された。
放映中から、当時を知る方たちがtwitter上で盛り上がっており、中には貴重な証言もあり、twitterをやっていてよかったなと久しぶりに思わされたものである。
そんな中で、オクダケンゴ氏による渋谷系年表というものがあるのを知った。
この年表にちょっとずつ私なりに補足していこうかなと思う。
今回は1997年に補足していきたい。
1997年の渋谷系
補足する上での注意事項
なお、●は年表にないもの。○は年表にあるが補足する必要を感じたものだ。
○市川崑監督、1961年の作品『黒い十人の女』リヴァイバル上映
リヴァイヴァル上映は小西康陽プレゼンツとして行われた。ピチカートが同年10月にリリースした「Porno3003」のジャケット写真は『黒い十人の女』の場面写真であり、同映画に出演している岸田今日子がナレーションを務める予告編的な曲も収められている。
なお、この年は北野武がヴェネチアで金獅子賞を授賞した年でもあり、そのためか今こそ日本映画を観直そうという動きが雑誌で起きていた。「ブルータス」は97年10月15日号で「日本映画を観ないのは日本人だけだ。」という特集を、「スタジオボイス」も11月号で「邦画のレジェンド」というタイトルで特集を組んでいる。後者では市川崑と『黒い十人の女』に関する言及がある。
●原田知世『I could be free』リリース(2/21)
前作『clover』ですでにトーレ・ヨハンソンがプロデュースを手がけいていたが、本作は1枚まるごとトーレがプロデュース。録音もすべてタンバリン・スタジオで行われている。
1997年の渋谷系にはいくつか重要な出来事があるのだが、その中のひとつは渋谷系とスウェディッシュ・ポップスとの接近。スウェディッシュ・ポップス自体は1995年頃から渋谷系直撃世代のリスナー周辺ではトレンドのようになっていたが[1]かせきさいだぁ「さいだぁぶるーす」がクラウドベリー・ジャム「Whatever Happens」をサンプリングしていたなんてこともあった 、原田知世とカジヒデキ、少し遅れてボニー・ピンクがタンバリン詣を行ったことで、それは決定づけられた。
○広末涼子主演、映画『20世紀ノスタルジア』(監督/原将人)公開(7/26)
広末涼子は97年に『米国音楽』のSPRING号でカジヒデキと対談を行っている
広末涼子のブレイクのきっかけのひとつに、96年に放送されていたドコモのポケベルのCMがある。同CMで使用されていた曲がカジヒデキの「マスカット」だった
●小西康陽、レディメイド・レーベルをスタート(6月)
日本コロムビアのレーベル内レーベルとしてスタート。リリース第一弾はピチカートの『HAPPY END OF THE WORLD』。
ファンタスティック・プラスティック・マシーンや5th Gardenがこの年にアルバムを同レーベルから発表した。
●『ワンダー植草甚一ランド』の19刷が発売
小西康陽の『これは恋ではない』などでも言及されている植草甚一氏の同書は当時は入手しづらい状況にあったが、この19刷発売でそれが改善された。
●HCFDMムーブメントが起き始める
HCFDMとはハッピー・チャーム・フール・ダンス・ミュージックのこと。その名の通り、ハッピーでチャームでおバカで踊れる音楽のこと。この頃に小西康陽やエスカレーターを主催する仲氏らがクラブでかけていたものが、いつの間にかそういう名付けをされ、ムーブメントになっていった。京都メトロが聖地的存在。
『米国音楽』のvol.10(11月号)でHCFDMディスク・ガイド的な特集が組まれていた。なお、同号の表紙を飾ったのはニール&イライザである。
●世界同時渋谷化(夏~秋頃)
オランダのアーリング&キャメロン、フランスのディミトリ・フロム・パリ、バンガロウ・レーベルを主催するドイツのル・ハモンド・インフェルノ、アメリカのジェントル・ピープルなどのアーティストが渋谷系的な音楽と通じるものがあるということで、世界同時渋谷化なる言葉が生まれ、雑誌「MARQUEE」などでも使われていた。
なお、前年にバンガロウからリリースされた『Sushi3003』という日本のポップスのコンピレーション・アルバムは、渋谷系的なアーティストが多く収録されており、その時点から、なんとなくこういう言葉は生まれてはいた。
なお、世界に同時多発的に存在していた渋谷系なアーティストは、前年に始動していたレーベル〈ラパレイユ・フォト〉から多く国内盤がリリースされている。
●ユカリフレッシュ、『YUKARIS PERFECT』をリリース(9月)
同アルバムに収録された「YUKARI’N DISCO」はHCFDMアンセムともいえる曲。翌年、バンガロウからリリースされた『sushi4004』にも収録された。
●『Ro3003』がリリース(11月)
バンガロウがドイツ版『sushi3003』ともいえる、ドイツの〈渋谷系〉的なポップスを集めたコンピレーション『Ro3003』をリリース。世界同時渋谷化って本当なの?と思ってた諸氏を納得させたであろう1枚。
●マイク・オールウェイの新レーベル〈if〉始動(12月)
〈el〉の後継レーベル的な立ち位置である〈if〉がオムニバス盤『ソング・フォー・ザ・ジェットセット』をリリース。キング・オブ・ルクセンブルクのサイモン・ターナーなどが参加。
●京都のミニコミ『POPSY ROCK』vol.05で〈el〉特集(12月)
京都のデザイン事務所PAT detectiveが発行していたミニコミ誌『POPSY ROCK』で、『ソング・フォー・ザ・ジェットセット』に合わせたのか、〈el〉を特集。世代的には〈el〉をリアルタイムで聴いていなかった、当時の10代の渋谷系直撃世代リスナーの良きテキストとなった。
気が向いたら、という感じなので、次がいつになるかは約束できないけれども、なんとなく続けていきたい。
なお、このページ自体も加筆は続けていくつもりです。
註釈
↑1 | かせきさいだぁ「さいだぁぶるーす」がクラウドベリー・ジャム「Whatever Happens」をサンプリングしていたなんてこともあった |
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